レポート「遠野 森のファンタジー~影絵とキャンプの2日間~」
7月27日(土)-28日(日)に1泊2日で開催した「遠野 森のファンタジー~影絵とキャンプの2日間」。
集まった小学生たちが森やそこでのキャンプの中からインスピレーションを得ながら、影絵の物語をつくり、最後の夜に舞台上演をするという2日間でした。
1日目
「ほしふねさ~ん!」
集まった子どもたちと大きな声で、今回のゲスト”hoshifune ほしふね”のおふたりを呼び、この日がはじまりました。
呼ばれて登場したおじいと、隣のものがたりの星からやってきたという、おばあ。いっきにおふたりの世界観に引き込まれました。
オープニングではまず、2日間を共にする仲間たちの自己紹介をしました。小学1年生から6年生まで、遠野の子もいれば九州の子もいて、お互い知っている子もいれば初めて会う子もたくさんいて、ドキドキワクワクのこの時間。
2日間を共にするみんなの顔合わせが済んだら、ほしふねさんが考えてくださった、「カッパケチャダンス」でその場の緊張をほぐし、みんなの息を合わせます。
“ケチャ”というのは、バリ島で行われる民族舞踏のこと。「チャッ」という声を発しながら、何種類かのリズムパターンを合わせてひとつの合唱になります。
今回考えてくださった「カッパケチャダンス」では、「カッパ」と唱え手を動かしながら、いくつかのリズムパターンで合唱しました。
これがとても楽しくて素晴らしくて、もう既に感動的でした。
この「カッパケチャダンス」は、この2日間で時折登場することになります。
雨が降っていたこの日。オープニングが終わったら、レインウェアを着て、森へ。
森でしばらく過ごしているうちに、いろんな感覚がひらいてきます。見て、聞いて、触って、嗅いで。きのこひとつとっても、いろんな色、形、匂い、触り心地があって、それらを次々と発見しては生き生きとしてくる子どもたち。
いろんな感覚で、各々森を感じ、楽しみました。この時に感じたもの、発見したものが、後々の制作にインスピレーションをもたらしてくれます。
さて、お昼ごはんのあとは、さっそくワークショップのはじまりです。
今回は生火での影絵上映を試みるため、まずは綿で紙縒りをつくり、生火を体感することからはじめました。
電気を消し、火をじーっと見ながら、今回上映するお話のベースとなる、遠野物語「マヨイガ」の朗読を聞きます。火はこわいもの。真剣に向かわなければ、本当に危ないことになります。でも、火は素晴らしいものでもあります。この生きている火だから、映し出せるものがあると信じて。
そして、影絵のパペットづくり。
物語の世界や森で感じたもの、いろんな存在たちからヒントをもらい想像を膨らませて、パペットにするキャラクターをひとりひとり考え、手を動かしました。
あっという間にキャラクターを描いてパペットをつくりあげる子、自分が納得がいくまでたくさん描き直してやっとキャラクターを生み出す子、ものすごい集中力でキャラクターの細かい絵柄を描き上げる子。どの子もどの子も、自分のパペットに向き合い、その子の個性が現れる作品ができあがっていきます。
パペットをつくりあげた子たちから、手分けしてこの日の夕ご飯づくりと風呂焚きをしました。カレーとサラダにする具材の下準備をし、カレーを煮込むための焚き火をおこし、ドラム缶風呂を沸かしました。初めてマッチを扱う子も、扱い方を教わりながら挑戦してみました。
パペットづくりや夕食・お風呂の準備がひと段落したところで、影絵の舞台装置を建てます。次の日まで雨が続く天気予報だったため、野外上映をするのは断念し、室内に舞台装置をつくることにしました。ほしふねさんが公演するときに持ち歩いている舞台装置を、みんなで協力して組み上げていきました。
そのころにはお風呂もちょうどいい温度になっていて、お待ちかねのドラム缶風呂と夕ご飯タイム。この2日間で、このドラム缶風呂に入ったことが一番心に残ったと言っていた子もいました。
夜には、ほしふねのおふたりが影絵を映している様子を観ながら、明日みんなで作り上げていく物語のベースとなるお話を聞きました。夜、スクリーンに影が映るとどのように見えるのか、みんなのイメージもふくらんでいきました。
2日目
さて2日目。この日も朝食後、「カッパケチャダンス」からはじまりました。
それから、それぞれがつくったキャラクターに向き合い、その性格やセリフを書き出していきます。みんながそれぞれつくったキャラクターを紹介しあい、物語の流れを決めていきます。パペットの動かし方も練習し、自分がつくったキャラクターはどんな動き方をするだろうかと、パペットに語り掛け想像しました。
その後、みんながつくったパペットとキャラクターの設定やセリフを紹介しあい、物語の構成を話しながら決めていきました。
上映では楽器隊も登場することに。
竹を切って太鼓にしたり、穴をあけて笛にしたり、刻みを入れてギロにしたり。楽器づくりにも取り組みました。
その後、つくった楽器や子どもたちが自分で持ってきた楽器、ほしふねさんが持っているバリの楽器の音を出してみて、影絵のお話に合わせた楽器隊の演奏も、どのようにすると良いのか考えて練習をしました。
お昼ご飯のあとは、今日もまた森に散歩に行き、通しのリハーサル。
もうこのリハーサルもそれぞれの子どもたちから生まれたキャラクターたちが生き生きして、スタッフもウルウルするくらい素晴らしかったのです。
でもなかなか大きな声を出せなかったり、セリフに感情がこもらなかったり、子どもたちにも緊張が感じられました。誰かの前で披露をするのはこわいものです。涙しながら葛藤している子もいました。
夕ごはんを食べた後、みんなで集まってこれまでの2日間を振り返り、夜の上映に向けての気持ちを共有しあいました。この2日間、家族のようにみんなで過ごし、ひとりひとりの個性を輝かせながら、上映に向けてまっすぐ取り組んできました。もうそれだけで充分すぎるくらい、かけがえのない2日間になっているのだけども、でも今夜はその集大成として、きっともっと素晴らしいものができるよね、そんな話をしました。
そして、いよいよ本番。
暗くなりはじめ、お家の方々が集まったところで、上映がはじまります。
本番の子どもたちの本気具合は、やはり違いました。
観てくださった方々の涙。やり終えた後の子どもたちの誇らしげな顔。
最高でした。
上映の様子は動画にも撮りました。ただしその場でリアルに感じた感動とその記憶も大切に残したいため、ここにあげるかどうかまだ迷っています。もしやっぱりみなさんにその時の様子を少しでも感じてほしいとなったら、ここに動画をあげたいと思います。
どうかこの子どもたちの力が、ずっとその子の中にあり続けられますように。
この2日間の出来事が、これからを生きる子どもたちの糧になりますように。
そう強く思った、本当に素晴らしいかけがえのない2日間になりました。
この2日間リードしてくださったほしふねのおふたり、共に過ごした子どもたちとスタッフ、子どもたちを2日間預けてくださったご家族の皆さん、森のいろんなものたち、上映を観に来てくださった方々、みんなに、感謝の気持ちでいっぱいです。
愛にあふれた2日間を、ありがとうございました。